こんにちは。
皆さんは、飛べない鳥と言えばどの鳥を思い浮かべるでしょうか?
飛ぶより泳ぐ。その愛くるしさから世界中のヒトを虜にしているペンギン。
豪華絢爛。虹色に輝く翼を持つ、キジ。
様々かと思いますが、私を虜にした飛べない鳥は、「カグー」という鳥です。
カグー(Rhynochetos jubatus/別名:カンムリサギモドキ)は、フランス領ニューカレドニアの固有種です。
天国に一番近い島と呼ばれるニューカレドニアは、憧れのリゾートとして数々の話題を作ってきました。この島は生態系が盛んであり、様々な固有種が生息しています。
体長約60cm。羽毛等の目的による乱獲で、約600〜700羽しか生息していません。また、そのほとんどが保護区域で保護されています。
私と彼等との出会いは、20年ほど前。旅行で訪れ、現地の友人に美しい鳥がいると連れられて自然保護公園に赴いた時でした。
何の知識もなく、最初に出会った時の感想は「地味だなぁ、、」でした。
飛べないし、その外観も地味。一つとして魅力を感じる事はできませんでした。
今考えれば、浅はかだった自分です。
そこで友人は、「財布を出してごらん」と言いました。
何の事か分からずおもむろに財布を差し出すと、1枚の紙幣を選んで渡されました。
ニューカレドニアの通貨は、パシフィック・フラン。紙幣の右下に美しい鳥が描かれています。
ん?確かに鳥は描かれているが、カグーではないじゃないか。
そう伝えると、友人はクスクスと得意気に笑い始めました。
「これがカグーだよ。(笑)」
そう、この紙幣に描かれている美しい鳥こそが、カグーの本来の姿だったんです。
普段は1枚目の写真の姿をしていますが、求愛行動中や威嚇行動中にその本来の姿を現すのだそうです。
10回ほど渡航しましたが、実を言うと、私はまだその本来の姿に出会った事がありません。
能ある鷹は爪を隠す。
とよく言われますが、それに近い概念でしょうか。
その地味で大人しくて、どことなく下を向いていて暗い雰囲気だし、鳥なのに飛べない。
なのに世界中のヒトを魅了する本質を持ってる。
私は、カグーの虜になってしまいました。
でもこの20年間、その理由が分からなかったのです。
ずっとカグーの事が気になっていて、てっきりその理由は本来の姿を見たいという欲望を満たしたいからなのだと思っていました。
しかし最近、それは違う事に気付いたのです。
飛べない鳥 = 価値がない?
でしょうか。もちろん違います。冒頭の通りペンギンなど、ヒトが価値を感じる飛べない鳥類は沢山存在しています。
その魅力とは、その美しさや能力のさらに深くにある概念だと感じています。
ない事を補うなにか = 魅力
だと最近思います。
ヒトが感じる、鳥のアイデンティティの多くは、その飛行能力でした。
飛べないヒトは大空を優雅に自分自身の力で飛行する鳥に憧れを抱き、その憧れは飛行機を産み出すまでになったのですから。
ですがカグーは飛べません。 けれど世界中から愛されているし、私もその虜になってしまった。
それは、大切な事を教えてくれるからなのだと思います。
飛べない変わりに本質的な美しさを持ってる。
その美しさは隠し持っておくべきで、”必要な時”、”必要な相手”に注ぐべきだという事です。
当時の未熟な自分では、こんな事に気付くことすらできませんでした。
ですが現地の友人はそんな事を教えたくて、クスクスと笑ったんだと思います。
私達も、完璧なヒトなんていませんよね。神は2つを与えないとよく比喩されますが、2つ3つあっても、何かがなかったりします。
でも時間をかけて、ない事は決してネガティブなものではなく、補ってそれを超えていくものだと気付いていきます。
それはきっとヒトとしても動物としても、本質的な美しさに結びつくのでしょう。
だから人生は、多少の苦難はあれど、平等に素晴らしい。のだと思います。
カグーの美しい姿は見に行くものではなく、出会うものでした。
私は彼等にとってその美しさを見せる相手ではありません。
けれど彼等がその美しさを見せる時に立ち会う事はできるはず。
いつかまた赴いたその時に、その姿を見れるかワクワクしています。(笑)
ぜひ皆さんもカグーに会いに行ってみてください。
ニューカレドニアの自然は、本当に素晴らしいですよ。
それでは。